三秋縋書き下ろし小説「夢が覚めるまで」

三秋縋書き下ろし小説「夢が覚めるまで」
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「さよなら」の響きだけが、いつまでも耳に残っていた。 ——覚えてないですか? それが、ユキが僕に向かって口にした最初の言葉だった。 2013年春。その頃、僕は人生のエアポケットとでもいうべき場所に落ち込んでいた。原因不明の無力感に取りつかれ、すべてを放り出して、自分の殻に閉じこもっていた。おかげで恋人に見放され、不眠症を患い、亡霊みたいに夜の町をさまよう毎日。気を抜いたら、僕という存在は今にもばらばらになってしまいそうだった。 そんなある日、少女に出会った。「ユキ」という名前以外は、すべてが謎に包まれた少女。ユキは僕に助けを求め、僕はそれに応じた。帰る場所がないという彼女を、何も言わずに匿ってやることにした。 ユキとの同居生活を送るうちに、僕の無気力は回復の兆しを見せ始めた。灰色だった毎日は少しずつ色づいていき、やがて鮮やかな色彩を取り戻した。それまでとは一転して、何をやっても上手くいくようになった。まるでユキが僕のもとに幸運を運んできたみたいに。 いつしか、ユキは僕にとってかけがえのない存在になっていた。彼女が隣にいれば、なんだって乗り越えられるように思えた。だからこそ、あえて彼女の素性には関心のないふりをしていた。君はどこからやってきたんだ? 何から逃げ出してきたんだ? そんな問いを発した途端、ユキがどこかに行ってしまいそうな気がして。 もしあのとき僕が思いきって尋ねていたら、彼女は真実を答えてくれただろうか。 今この瞬間にも、世界は滅びようとしているということ。 ユキが、人類に残された最後の希望だということ。 彼女はその使命を放棄して、ある目的を果たすために僕に会いにきたのだということ。 そして、ある日唐突に、僕は選択を強いられることになる。 一人の少女を犠牲にして、世界を救うか。 世界を見捨てて、一人の少女を救うか。 これは、僕とユキが運命を共にするようになるまでの42日間の物語だ。 ソフトカバー/四六判/144ページ

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「さよなら」の響きだけが、いつまでも耳に残っていた。 ——覚えてないですか? それが、ユキが僕に向かって口にした最初の言葉だった。 2013年春。その頃、僕は人生のエアポケットとでもいうべき場所に落ち込んでいた。原因不明の無力感に取りつかれ、すべてを放り出して、自分の殻に閉じこもっていた。おかげで恋人に見放され、不眠症を患い、亡霊みたいに夜の町をさまよう毎日。気を抜いたら、僕という存在は今にもばらばらになってしまいそうだった。 そんなある日、少女に出会った。「ユキ」という名前以外は、すべてが謎に包まれた少女。ユキは僕に助けを求め、僕はそれに応じた。帰る場所がないという彼女を、何も言わずに匿ってやることにした。 ユキとの同居生活を送るうちに、僕の無気力は回復の兆しを見せ始めた。灰色だった毎日は少しずつ色づいていき、やがて鮮やかな色彩を取り戻した。それまでとは一転して、何をやっても上手くいくようになった。まるでユキが僕のもとに幸運を運んできたみたいに。 いつしか、ユキは僕にとってかけがえのない存在になっていた。彼女が隣にいれば、なんだって乗り越えられるように思えた。だからこそ、あえて彼女の素性には関心のないふりをしていた。君はどこからやってきたんだ? 何から逃げ出してきたんだ? そんな問いを発した途端、ユキがどこかに行ってしまいそうな気がして。 もしあのとき僕が思いきって尋ねていたら、彼女は真実を答えてくれただろうか。 今この瞬間にも、世界は滅びようとしているということ。 ユキが、人類に残された最後の希望だということ。 彼女はその使命を放棄して、ある目的を果たすために僕に会いにきたのだということ。 そして、ある日唐突に、僕は選択を強いられることになる。 一人の少女を犠牲にして、世界を救うか。 世界を見捨てて、一人の少女を救うか。 これは、僕とユキが運命を共にするようになるまでの42日間の物語だ。 ソフトカバー/四六判/144ページ